同じ画面の前にいる”共犯者”と”強迫性” 『神椿市建設中。』βテストの感想

運良く『神椿市建設中。』のクローズドβテストに参加できたので、その感想を。
筆者の属性としては、「花譜のにわかファン(ファン歴[観測者歴]半年)」「謎解きそこそこファン(月に2~4公演行くくらい)」で、その要素が複合する謎解きゲームが気になって参加していました。

ネタバレには配慮していますが、雰囲気なんかはわかってしまうのでそれを摂取するのも嫌な方はブラウザバック推奨。

 

uc.kamitsubaki.jp

 

ストーリー抜粋(公式より)

「神椿市建設中。」は、KAMITSUBAKI STUDIOが2019年から開発中の
オリジナルIPプロジェクトです。

仮想都市「神椿市」の隠された謎を読み解き、街の秩序と平穏を取り戻す物語。
そしてその体験は仮想世界だけでなく、わたしたちの居る現実世界にも侵食していきます。

プレイヤーはスマートフォンを利用して、神椿市に潜む様々な「ナゾ解き」に挑戦。
中には、1人だけでは解決出来ない、
仲間達と協力をしなければならない謎も立ちはだかります。
また、スマートフォンの位置情報を活用し、外に出て移動することがナゾ解きの鍵になるような仕様を組み込んでいく予定でした。

 

 

概要

いわゆるARGの要素を持ち合わせた謎解きゲームです。
(ここではざっくり「物語と現実世界が交差する、大規模な体験型のゲーム」として使っています。有名なのだと「リアル脱出ゲーム」、最近では「Team Project:;COLD(都まんじゅう)」、ちょっと前には「ツイッターのあんたがたに挑戦します2020GW」が開催されていましたが、これらも全部言ってしまえばARGです)

プレイヤーたちは神椿市の復興を目指し、協力して(事前にDiscordの専用サーバーに入るよう指示される)謎を解いていきます。

 

プレイしてみての感想

いやー……はちゃめちゃによかったです。自分が一番面白いと感じた部分はどこなのか、という話ですが……

同じゲームをやっている”共犯者”がいる。そして、自分が救わなければならない対象は自分のその手で救わなければならないという”強迫性”。その2点です。
(花譜のプロデューサーであるPIEDPIPER氏がよくこの「共犯者」という表現を使うのでお借りしました)

まずはDiscordに入った仲間とのやり取り。それが面白かった。特設のサーバーを作成するスタッフの心意気もよいのですが、どちらかというと謎解き全体が”全員で協力する”という要素を色濃くデザインされていて、Discord内でああでもないこうでもないと謎解きの議論をしたり、タイミングを合わせたりする瞬間はとても”画面の向こうで確かに同じ謎と格闘している人がいるんだな”という気持ちにさせてくれました。(時には雑談、ボイスチャットもしたり。素敵な人たちばっかりで仲良くなりました)

それから、大規模なARGって自分がそのプロジェクトを知った時には謎解きや考察がほぼ全て終わっていることが多くて。(人間が多ければ多いほどそうなりがち、アンテナが高くないのもあるかもしれませんが)

クローズドβという構成が味方したのかもしれませんが、参加してさえいけばゲームの伝えたいであろう真髄(謎解き、設定の紐解き等)を味わうことが出来ます。(謎解き以外の考察をし続ける人たちもいましたが、唸るほどの彩度の高い話が出てきていました)

また、作品をプレイしている中で「ストーリーが動くのがわかってくるのでそれにリアルタイムで備えなければいけない」という部分はあります。
これは正直一長一短だと思っていて。そこには自分のリアルを削り取られ、作品に入るという”強迫性”が存在しています。(リアルの謎解き公演で実際に部屋に閉じ込められるのと同じ)

その時間には仕事や他の都合でどうしても間に合わない人もいるでしょうが、物語がリアルタイムで進行していることを示したり、待ったなしである状況、いわば祭りであることを如実に表現しているでしょう。(もちろん阻害された人にもフォローは必要でしょうが)自分はそれらも運良くクリア出来たのですが、これらは本サービスに向けてどうフォローするのかは気になるところです。

謎の難易度は(一部のものを除けば)そこまでハードでもないです。(謎解き経験のない方でもひと目~検索すればわかる程度、参加している方も謎解きファンというより花譜ファンやKAMITSUBAKI STUDIOのファンが大多数のようにも思えました)

Webを介するという形式

このご時世において、Web上を介する謎解き公演が最近増えましたが、それらと比べても遜色ない、むしろ同等以上のパワーを感じます。

個人的にはWeb上でやる謎解き公演は”その場にいる感”や”登場人物に対して役に立ってる感”や”死ぬ気で謎を解かないと前説で言われた通り本当に死ぬのかも感”のような、リアルな鬼気迫る感じが薄れる気が個人的にはしていますが、上記協力要素やストーリーとの相乗効果があって「いい体験をしたな~」となりました。

(直近でやったWebを介しての謎公演中に2回インターホンを鳴らされるという悲惨な経験が尾を引いているのかもしれませんが……)

いわゆる「こんなご時世」への配慮に関して 

現実世界の探索に対する配慮や「本当はこういうアクションを取らせたかったんだろうな……」という要素も。この辺りはプロジェクト説明文の

また、スマートフォンの位置情報を活用し、外に出て移動することがナゾ解きの鍵になるような仕様を組み込んでいく予定でした。

という一文に現れている気がしますが……それ込みでも楽しい、むしろそれがあることによるマイナスを感じさせないゲームでした。

 

原作要素についてと、まとめ

また、当たり前の話ですが、花譜ファンの方は狂喜乱舞するであろう要素がたくさんあります。(花譜ちゃんの新しい一面なんかも見られたりしました)

にわかファンである自分も花譜やKAMITSUBAKI STUDIOの他のシンガーの曲をもっと聞くようになりましたし。シンガーやそれに関わるプロジェクトを好きになれるような作品であることは間違いないです。

マネタイズをどうするかも気になる所ですが、(作品のプロモーションと割り切って本編も無料、ゲームを始めるのに課金がいる、謎解きのヒントやスキンに対して課金する、何かKAMITSUBAKI STUDIOの作品を買ったらプレイできる等様々な方法が考えられる)どうなろうが本サービスの稼働も期待せざるを得ませんでした。

今後の動向を楽しみに待ちましょう。


(花譜 『私論理』を聞きながら)