捏造ミステリーTRPG 赤と黒 基本ルールブックの顕現魔法レビュー

皆さん、捏造してますか?(挨拶)このエントリでは、「捏造ミステリーTRPG 赤と黒」の敵である、イツワリの強さの定義とはという話から、イツワリが使う顕現魔法のレビューをしていきたいと思います。シナリオ作成の敵データの作成で悩んでいる方、必見ですよ。

 

そもそもイツワリの強さとは?

同じランク(ex.虚偽級、虚像級など)のイツワリでも、強いイツワリ、弱いイツワリというのは存在します。

強いイツワリとは、端的にいうと「PCをセッション内でより多く殺害出来る可能性を秘めたイツワリ」のことです。魔術師のゲーム的な敗北条件は殺害により栄光をイツワリに取られるただ一点のみですので、この条件を満たしやすいイツワリ(のデータや顕現魔法)が強い、と言えます。

また、それ以外にも「戦闘を長引かせる、HPを回復する」(引き分けの可能性を上げている)条件を満たす魔法も強いと言えます。

 

また、捏造ミステリーTRPG赤と黒は、HPの数値の少なさ、敵の行動中に回復出来ないこと、再初期化の存在から、「(回復してしまって実質)無傷であるダメージの数値」と「全滅するダメージの数値」が近しいシステムとも言えます。

(例:全員追求者の4人プロジェクトを想定すると、

復元値4×4人=16点のダメージを与えられると再初期化により実質無傷の可能性がある

最大HP7×4=28点のダメージを与えられると全滅の可能性がある)

 

簡単な計算ですが

1.制圧攻撃のダメージを計算する(回数3、威力4なら12点)

2.フルコンボが撃てた場合の魔法とコストを計算する(例えば烙印顕現を3回打つのが最大の損害を出す場合、

コスト:黒3=24/26(黒のカード中、何枚プレイ出来るカードが入っているか)

ダメージ:魔法に記載されているダメージ×ダメージを受けるPC数

(コストは単色の色ならそれにどれくらい入っているかで計算、GMもセットを選択出来るので最大限上振れるとしてこれくらいとしている、?なら同じように計算して2倍する、ex.烙印顕現を威力4で4人PCに打つと、24/26×4×4=14.7…)

3.1と2を足し合わせて計算結果が

 

10点前後…弱めのイツワリ。初心者相手ならこれくらいでも大丈夫。

15点前後…普通のイツワリ。これくらいを目指そう。

20~25点前後…歯ごたえのあるイツワリ。許容される最大限の火力。おそらく魔術師を2人くらい殺せるのでもっと弱くしていい。

30点以上…上振れると1局面で壊滅の危険性あり。慣れているPLでもPC側が敗北する可能性がぐっと高まる。

 

何度も繰り返して言うようですが、捏造ミステリーのシステムの肝、一番面白いところである「謎を解いたというアハ体験」をPLたちに与えるには、「弱いイツワリ」が適切です。強いイツワリを出すと、それに勝つ、何とか生き残って戦闘をいなしたという体験が謎解きのアハ体験を上回ってしまい、謎解きの楽しさが伝わりづらくなります。

虚偽級のイツワリのデータをそのまま初心者4人に相手にぶつけると全滅しかねないので、注意が必要です。ルールブックには「イツワリが所持する顕現魔法の個数は[顕現]+1くらいが妥当」とありますが、シナリオブック等のサンプルスペックを見るに、同じ、もしくは-1にするのが適当だと思われます。

というわけで、イツワリのデータ作成初心者の方が参考になるように、顕現魔法のランク分けをしました。(このランク分けは、比良坂個人の意見であることをご理解ください。想定的には「4人PLで系譜がバラけている、初期作成の魔術師」を相手にし、虚偽級のイツワリを作成するとしています)

 

A…採用するには慎重な調整が必要な強い魔法

B…AとCの間。他の魔法との兼ね合いもあって一概には言えない魔法(Bの定義が広いのでB+、B、B-でAより、Cよりを示しています)

C…とりあえずで採用しても事故を起こす確率の低い魔法

 

ダメージ型

・烙印顕現 B+

全ての基本となるダメージ型の魔法。とりあえずで積んでも事故らないように思えるが、問題は最安のコスト。黒札がほぼダメージに変わるので、これがあるとプレイした際に発動できる魔法がない、ということはほぼ無くなる。顕現回数分の全てで烙印顕現のダメージが魔術師に飛んで大丈夫なのかはよく考えよう。

・搾取顕現 B

烙印顕現と比較すると回復のおまけがついて、コストが上昇している。回復自体はHP最大値よりも回復しないゲームの都合上そこまで脅威にならない。

・処刑顕現 B+

 ダメージが下がる代わりに即死効果がつく攻撃。威力と回数を調整するとカバーリングが出来る守護者や逆境者が居ない場合、ほぼ確殺が取れるようになる。

・串刺顕現 B+

イツワリのランクが上がれば上がるほど高威力になる魔法。これも虚偽級なら7点と致死圏内。制圧攻撃との兼ね合いで調整が効かなくもないがやっぱり強い。

・奈落顕現 A

おそらく一番ダメージが出る顕現魔法。この魔法の効果を翻訳すると「自分のHPの半分以上のダメージを必ず与える」となる。ゲーム後半で真理の最大HPが上がっている場合、とんでもないダメージが出る可能性アリ。間違っても最後の真理がHP50とかのイツワリに積まない方がいい。

・侵食顕現 C

評価Cの理由は1つ。この魔法が決まっても直接殺害出来ないから。HPの多い魔術師にはよく効くんですがね。

・螺旋顕現 B+

攻撃対象が増加。コストが大きく、ダメージがそこまで大きくないのでBの範囲にギリギリ収まっているという表現が近いが、裏を返すと連打すれば2人殺せなくもない。

・死滅顕現 B+

エリア攻撃。さらにおまけでハンデスつき。ハンデスは相手に選択権があるのでそこまで脅威ではないが、ダメージの値が大きいと1局面で全滅の危険性も。連続プレイがあまり現実的ではないコストなのでBの範疇で収まっている。

攻撃強化型

・幻力顕現 A

アタック3が乗った制圧攻撃が飛んでくと魔術師は簡単に死にます。これに限らず殺害の処理が行われてもイツワリの継続魔法は消えない(基本ルールブックP.80参照)ことに要注意。

・幻壁顕現 B

顕現の+修正にビビるかもしれないが、その通り若干注意が必要。HP回復魔法とのコンボは地獄なのでやめよう。(正解ボーナスや断罪権限、災厄権限で殴られると20点程度のダメージが簡単に出るが、通常の調書の攻撃がシャットアウトされるため)

・幻呪顕現 B-

調子乗ってインフィニティで2回攻撃してくるアタッカーを咎める効果がある。攻撃するしないの選択権が魔術師側にある魔法なので、そこまで脅威ではない。

・黒死顕現 A

制圧攻撃の威力の調整と他の攻撃権限魔法によって鬼畜と化す。PC側の復元は最大5点なので、例えばイツワリの威力を5にして烙印顕現を積むと惨劇が開始される。

・星辰顕現 B

半分切り上げなのがミソ。正解ボーナスや災厄顕現などのアタッカーの特大ダメージを咎める効果がある。イツワリの真理のHPを盛らなければ何とかなる(と思う)。

・再誕顕現 B-

 いわゆるガッツ付与。10点の真理はアタッカーの1手で簡単に破壊されることがほとんどで、そこまで脅威ではない。

・天蓋顕現 B

アタッカーと補助役をより明確化する魔法。また、顕現の値がいくつなのかが問題。ダメージを受けた時に発動する魔法なので通常の権限魔法も調書での攻撃もダメージを抑えることが出来る。

・封土顕現 B

天蓋顕現と同じで、顕現の値をいくつにするのかが問題。調書のダメージとの兼ね合いで調整は出来なくもない。

支援型

・再生顕現 B-

HPの回復はそこまで脅威ではない(魔術師を殺害しないので)。手札補充に目が行くかもしれないがそれもランダムなのでそこまで信頼できない。

・退廃顕現 C

付与魔法の帳消しをしたところで魔術師の手番の中の一回と交換するだけ。嫌がらせにはなりますが……。

・無窮顕現 A

実質権限が1回増え、更に手札の50%以上が有用なものになる。コンボの起点になって楽しいが攻撃魔法を連発すると魔術師の死体が増えるだけなのでそうするなら細心の注意を払おう。

・衰弱顕現 B

大規模なハンデス。直接的なHPダメージはないが、1つの局面で2回撃てると魔術師の手札を全部捨てられることには注目しておきたい。(対抗策としてオーバーロードがあるのだが……)

・遮断顕現 C

これも発動しても殺害しないので評価はC。イツワリの身を守るくらいには働きますがせいぜい防げてもダメージ1~2点くらいかなぁ……

・天命顕現 C

敵が使うとそこまで脅威にならないタイプの魔法。殺害もしないし基本的にPC側のHPが低いシステムなので……チャンス0なのにそれをやるなよ。逆境者が泣いてるよ。

・交錯顕現 A

威力と回数がそのまま飛んでいく。威力と回数が平均的な(つまり威力と回数の積が大きい)イツワリに持たせないこと。

・支配顕現 A

文句なくぶっ壊れ。ゲームシステムでイツワリ側がほぼ禁じられている「攻撃対象の任意選択」、シナリオ1回しかないPC側のリソースである「正解ボーナスの無効化」の2つをこの魔法1つで成し遂げる。未行動のアタッカー(追求者、破綻者)を支配できるとインフィニティ込みでほぼ1人ないし2人の魔術師を殺害でき、まだその局面で行動していない魔術師の手番も殺害でスキップ出来る。行動済みの魔術師なら何も起こらないし平気でしょ、で積むと事故る可能性大。

 

おわりに

迷宮の書に記載されているシナリオでも顕著でしたが、「初期作成の初心者4人に対して虚偽級をぶつけて回ると敗北する可能性がある」というのをデザイナー側も気づいたんじゃないかと思います。それと、事故っても正直に言って敵のデータを弱体化したらPLは許してくれると思うよ。